SPEAKER SENSE
スピーカーセンス
Updated 04/11/96
From 1990 Meyer Soundfile
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1990年に、メイヤーサウンドファイルに掲載されていたアンプ・ゲインとメイヤーのスピーカーの文を翻訳した物です。1991年2月発行のアルテニュースに掲載されました。


【アンプ・ゲインとメイヤーのスピーカー】

パワーアンプの電気的特性におけるPA、SRへの影響は多大なものです。大まかにパワーアンプ特性を知る目安となるものは、ボルテージ・ゲインです。特にシステムにフィードバック・タイプの保護リミッターが組み込まれている場合、アンプ・ゲインはスピーカーの性能に甚大な影響を及ぼします。そうした理由から、メイヤーでは明確なアンプ・ゲインの推薦値を表示しています。今回はアンプのボルテージ・ゲインを定義し、システムから最良の性能を引き出すために、どのようにゲインをコントロールするのかを説明いたします。


【なぜゲインをコントロールするのか?】

アンプのボルテージ・ゲインは、所定の出力レベルに合わせてアンプを駆動するのに必要な入力信号レベルを決めます。フルパワーに到達するのに、高いゲインを伴うアンプは低いゲインを伴うアンプより入力ボルテージが少なくて済みます。
見た目で判断すると、人はゲインが多ければ多いほど良いと結論づけるかも知れません。ゲインを上げると、システムのヘッドルームが増加するのではないかと???
現実にそれが当てはまるのは、アンプがクリッピングを起こす前に、アンプをフィードするステージ(例えばミキサーの出力)がクリッピングを起こす、という場合だけです。しかし、そういうケースはまれです。システムの中でアンプが最初にクリッピングを起こすコンポーネントだとしたら、そのゲインを上げるのは実際には好ましくありません。
まず、システム中のいずれのゲイン・ステージも、オーディオ信号だけでなく、それより先にステージで生じる不要なノイズもすべて増幅するのだ、という点を忘れないでください。スピーカーまでたどり着く一連のつながりで、パワーアンプは最後のコンポーネントです。ですからパワーアンプは、マイク ロホン・プリアンプからマスター・システムイコライザーに至るまでオーディオシステム全体のノイズに出会うわけです。もしアンプのゲインが上げられると、そのノイズすべてのレベルも比例して一緒に上がります。


【ボルテージ・ゲインとは何か?】

fig1.gif 「ボルテージ・ゲイン」という言葉はアンプの出力、及び入力信号電圧の間の比に関連しています。

Fig.1は、は、オーディオパワーアンプ回路を簡略化して表わしたものです。音源は、アンプ入力インピーダンス(Z1 )によりAC電圧(Ei )を発生させます。アンプ出力は、負荷インピーダンス(Z2 )全域でそれに対応する電圧(Eo )を順番に発生させます。電圧は次の式(オームの法則)で求めます。

Av=Eo÷Ei (式1)

もしEiが1ボルトRMSで、Eo が10ボルトRMSならば、アンプには10ボルトのゲインがあると言えます。
ボルテージ・ゲインは、通常デシベル表示します。デシベルは二つの量の比を対数で表わしたものですから換算は、電卓で簡単に行なえます。電圧の場合に使う一般的な式は、

n dB=20log(V1÷V2)(式2)

ボルテージ・ゲインをデシベル表現するにはEo ÷Ei です。では続けて例をあげますと、仮にEi が1ボルトRMSでEo が10ボルトRMSだとすると

Av in dB=20log(Eo÷Ei)=20log(10)=20

出力及び入力電圧間の比を10:1で維持するアンプは、20dBのゲインがあると言ってよいでしょう。


【アンプゲインとSpeakerSenseドライバー保護】

fig2.gif Fig.2は、メイヤーM-1Aコントロール・エレクトロニクス・ユニット(CEU)にある低域ドライバー保護システムの略ブロック図です。(多少これより複雑ですが、高域チャンネルもほゞ同様です。)入力信号は先ずM-1AのInputへと通過します。M-1AのLo outputが、アンプ入力を駆動します。アンプ出力はスピーカー及び元のM-1A Lo Sense入力、両方へと経路を定められます。
Sense入力は、アンプ出力電圧を監視し、そこからSpeaker Sense回路がスピーカー・ドライバーに与えられた平均パワーを計算します。ドライバーの安全な連続パワー限度を超過した時、RMSリミッターが作動してM-1A Lo出力における平均信号レベルを低く保ちます。(シグナル・ピークは実質上影響を受けません。)
パワーアンプのボルテージ・ゲインは、M-1A Lo出力(ここでリミッティングが始まる)からの信号レベルを決めます。ゲインが高ければ高いほど、限界値は低くなります。また、ゲインが高いほどリミッティングの限界とM-1Aの最大出力との差が大きくなります。アンプのゲインを上げると、M-1A出力がクリッピングする限界へさらに近づけてシステムを駆動させてしまうことになります。
ある一定のポイントを越えると、アンプゲインの上昇はM-1Aリミッターのコントロール能力を超過してしまいます。そうした状況下では、安全な作動限界をはるかに越えてシステムを駆動しかねません。その結果、ボイス・コイルを黒焦げにするはめとなります。

【最適アンプゲインとは?】

前に述べたように、アンプが余分なゲインを得る場合があることは明らかです。ゲインが少なすぎても、やはり好ましくありません。私たちは、システムがフル・パワーに到達する前から、ミックス・コンソールの出力がクリッピングを起こすことなど望みません。それでは、メイヤーサウンドシステムで、プロ用パワーアンプのために、どの程度のゲインが適正なのでしょうか。
+4dB(プロ機材の基準)というわずかなライン・レベルを仮定しますと、メイヤーとしては、アンプ・ゲインは20dBから26dBの間におさえておくようアドバイスします。これだけの範囲があればアンプへフィードする機器のために十分なヘッドルームができますが、それにより、システムの中で確実にアンプが最初にクリップするコンポーネントとなります。
メイヤーシステムと一緒に使うアンプの最大許容ボルテージ・ゲインは、30dBです。ゲインがこの値を超過すると、+4dBuコンソール出力がSpeakerSense保護リミッターを簡単に越えて、スピーカーのドライバーを危険にさらしてしまいます。(とりわけ、MSL-3を使う人は、このゲイン限度をよく監視しなくてはなりません。というのは、M-3Tが接続されているパワーアンプのゲインを測定し、もしそれが30dBを越えるとミュートするからです。(センスチャンネルのアンプが出力してない場合と、ゲインが30dBを越えている場合(2002の場合アッテネーター-3dB以上)にミュートが働く。M3Tだけの機能。

ヤマハ系(PC-2002M)のボルテージゲインは31.2dBですから、ATTは-11~-6が適性レベルと言えます。
アルテの場合、YAMAHAのアンプは通常-8dBのアッテネータの位置で使用。

【アンプ・ゲインを決定する】

パワーアンプのゲインを決める一番手っ取り早い方法は、そのスペックを調べることです。アンプ・ゲインの表わし方はいろいろありますが、最も一般的なのは、デシベル表示です。
アンプのメーカーの中には、ゲインを明記せず、その代わりに入力感度定格を示しているところがあります。この数字は、アンプを最大の連続出力パワーまで駆動する入力信号ボルテージを示しています。これをシグナル・ゲインの数字に直すには多少の計算が必要となりますが、あまり正確なものとは言えません。
まず、アンプの最大RMS出力ボルテージは、そのパワー・スペックから決定しなくてはなりません。その換算をするには、オームの法則を使います。パワーとインピーダンスが分かっていれば、その法則でボルテージが求められます。

E =√W・Z(式3)
ここでは E = RMSボルテージ
W = ワットで表わした電力
Z = オームで表わした負荷を表わします。

例えば、あるアンプが8オーム負荷へ連続で最大出力350ワットとスペックされていると仮定しましょう。この数字を(式3)へ代入すると、
E=√350x8=√2800=53VRMSとなります。

もし、このアンプがフル定格に+4dBu(1.23VRMS)という感度にスペックされていると、dB単位のボルテージ・ゲインを得るのに前記の(式2)を利用することができます。

AvをdBの単位に直すには
= 20 log(Eo÷Ei)
= 20 log(53÷1.23)≒33dB となります。

また現物のパワーアンプがある場合は、ゲインを測定することをお薦めします。そうするには、正弦波オシレータ、電圧計、それとパワーアンプのフル出力パワーを放散させることができるダミーロードが必要となります。

fig3.gif 測定手順
・パワーアンプゲインのコントロールを最大に、そしてオシレータの出力レベルを最大にセットします。
・テスト機器の電源スイッチを入れます。
・オシレータの出力を電圧計で測定しながら、電圧計の目盛りが1VRMSとなるまでオシレータ出力レベルを上げます。
・負荷計量装置をアンプ出力へ、オシレータ出力をアンプ入力へ、電圧計を負荷計量装置へ、それぞれつなぎます。(Fig.3)
・パワーアンプの電源スイッチを入れます。
・電圧計に表示される出力ボルテージを記録します。
Eo(パワーアンプ出力における電圧計の目盛り)とEi (1VRMS)の両方が解ったので、ここでゲインの計算をすることができます(式2)。

【アンプ・ゲインのコントロール】

もし、パワーアンプのボルテージ・ゲインが許容限度内(最適で20dBから26dB、最大で30dB)から外れたら、調整をしなくてはなりません。ゲイン・コントロールがついている時は、それを使うようにしても良いでしょう(クリックつきなどの再現性のある物)。Fig.3に示してあるように、ゲインを測定し、望みのゲインになるようキャリブレートするため、パワーアンプ・ゲインコントロールを調整します。
パワーアンプにゲイン・コントロールがついていない場合(あるいゲイン・コントロールがロック不能の場合)、インライン減衰パッドを利用し、パワーアンプ入力のすぐ手前に接続します。ゲインの高いパワーアンプの大多数には、最適20dBから26dBのゲインを得るのに、一6dBの標準パッドで十分と考えまられます。

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